様々な企業さんの採用のお手伝いをしていますが、新卒採用の評価項目には必ず「リーダーシップ」という項目があります。
中途採用では細かい評価項目はありませんが、実績と質問を通して「リーダーシップ」があるかないかを見ています。
では、そもそも「リーダーシップ」とはどのようなモノなのでしょうか?
「私は引っ張っていくタイプではないので」
と思ってる方はいませんか?
しかし、リーダーシップは自分の性格とか関係なく、大前提で仕事として必要なのです。
だからこそすべての企業が最低限のリーダーシップを求めるのです。
仕事はチームで行っていくことがほとんどです。会社組織で仕事をしていたら誰しも必ず部下ができます。
そして部下を引っ張っていくことは仕事として必要なのです。
リーダーシップが取れない、苦手と悩んでる人はいませんか?
そんな方へ「リーダーシップ論」を元に、リーダーシップの取り方を解説していきます。
本記事の内容
- 結論
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リーダーシップとは何か
-
リーダーシップ論の変遷
-
リーダーシップ論の種類
- まとめ
本記事の信頼性
この記事を書いている私は、会社員時代に1,000人以上の部下を育成し、東証一部上場企業のグループ会社の代表をしておりました。現在はキャリアコンサルタントとして様々な業種のキャリア相談を受けています。
リーダーシップについて興味のある方は是非最後まで読んでくだい!
結論
早速ですが、まずは結論をご覧ください!
【リーダーシップとは】
信念を創り出すことによって協働する個人的意思決定を鼓舞するような個人の力
【実行するために必要な能力】
- 客観的事実から状況を判断する能力
- 部下の意識を経営目的に向かわせる能力
【リーダーシップのもとになる要素】
- 金銭や昇進
- 減給や解雇
- 部下が従う義務
- 尊敬やあこがれ
- 技術や知識
【リーダーシップ求められる機能】
「変革を推し進める機能」
具体的な方法が、
- 長期的なビジョンの提示
- ビジョンの伝達によるメンバーの統合
- メンバーの動機づけ
【リーダーとして望ましい行動】
- 部下を援助し集団で討議し決定する「民主型リーダーシップ」
- 部下の役割を明確にし、感情への気配りをする
- 参加型で従業員志向
- 目標設定を明確にし、人間関係を良好に保つ
次節より、順番に解説していきます。
リーダーシップの機能
1、リーダーシップの定義
まずは、「リーダーシップ」とは何か?について認識を統一しておきましょう。
バーナードによるリーダーシップの定義
アメリカの有名の経営学者・バーナードによるリーダーシップの定義を中心に解説していきます。
バーナードは、リーダーシップを下記のように定義しています。
信念を創り出すことによって協働する個人的意思決定を鼓舞するような個人の力
簡単に言うと、
目標達成のために、人々にプラスの影響力を与えることです。
そのために必要な力が、下記2点です。
- 客観的事実から状況を判断する能力
- 部下の意識を経営目的に向かわせる能力
リーダーシップの2つの側面
バーナードは、リーダーシップには下記の2つの側面があると述べています。
- 技術的側面 ー 体力、スキル、知識など教育などによって育てることが可能
- 道徳的側面 ー 決断力、忍耐力、勇気などの資質
これら両面を十分に発揮することが、有効なリーダーシップであるとしています。
2、リーダーシップの源泉
リーダーがメンバーに影響力を発揮するためには、力(パワー)が必要になります。
リーダーシップの源泉を社会的勢力といいます。
社会的勢力には、下記の5つがります。
1、報酬勢力
金銭や昇進・昇格、賞賛などの報酬を与える能力ベースにした勢力
2、強制勢力
叱責や減給、解雇などの罰を受けるのではないかという、影響の受けてがもつ予想から生じる勢力
3、正当勢力
リーダーは影響力をお行使する正当な権利を持っていて、部下も従う義務があると感じる場合に成立する勢力
4、準拠勢力
尊敬やあこがれを感じるなど、リーダーに個人的魅力を感じていたり、一体感を抱いていたりする場合に成立する勢力
5、専門勢力
リーダーの方が自分より技術や知識や能力などにおいて優れていると感じているときに成立する勢力
1、2、3は組織から公式に与えられるもので、4、5はその人の努力や資質で獲得するものです。
3、制度的リーダーシップ
組織理論で有名なセルズニックによれば、組織はもともとはタスクを遂行するための手段として形成されるが、やがて独自の価値が注入されたとき制度となるとしています。
制度とは、価値が注入され、その存在の独自性を象徴するようになった組織のことです。
この場合、トップマネジメントのリーダーシップとは、集団レベルでの部下との関係に焦点を当てたリーダー行動を超えたモノであり、価値観を注入した組織全体を率いていくステーツマンシップであるとされ、このようなリーダーシップには、次のような機能があります。
- 組織の使命と役割の設定 ー 組織の一般的な諸目標を、もっと具体的な形で表現し直すことによって、組織が制度として存続できるようにする。
- 目的の制度的体現 ー 使命と役割を設定した後に、具体的に設定された目的を組織の社会構造のないかに組み込むことである。そのためには、複雑なネットワーク構造をなす組織の社会構造を統制する方法を熟知している必要がある。
- 精度の一貫性の防衛 ー 制度の一貫性、つまり、組織のもっている価値、能力、役割を防衛する。
- コンフリクトの処理 ー 組織内部の利害関係者集団間のコンフリクトを解消する
●4、リーダーシップとマネジメントの違い
リーダーシップとマネジメントはよく混同されます。コッターは経営者や管理者に求められる機能を下記のように分けました。
「変革を推し進める機能」
「効率的・確実的に組織を運営する機能」
前者をリーダーシップ、後者をマネジメントと定義しています。
それぞれ機能を果たすには、下記のステップを踏みます。
- 目的・目標を決める
- 目的を達成するための人的組織を築く
- 築いた人的組織が目的を達成できるよう手を打つ
各ステップの具体的な方法は、リーダーシップとマネジメントでは異なります。
【リーダーシップ具体的な方法】
- 長期的なビジョンの提示
- ビジョンの伝達によるメンバーの統合
- メンバーの動機づけ
【マネジメント具体的な方法】
- (短期的な)計画や予算の立案
- 組織構造の設計と人員配置
- 予算や実績管理を行い、問題解決を図る
しかし、コッターは両者を独立したプロセスとしてはいるものの、決して反目し合うものではなく、むしろ相互補完関係にあるとしています。
リーダーシップ論の変遷
リーダーシップ論の研究は大まかに、下記の3つをたどってきました。
- 資質特性論
- 行動類型論
- 状況適合論
それぞれについて解説していきます。
1、リーダーシップの資質特性論
初期のリーダーシップ研究アプローチであり、
実際に優れた功績を残したリーダーをもとに、そのパーソナリティとリーダーシップとの相互関係を明らかにしようとしたものです。
科学的に証明される統一的な結論を導くことはできませんでした。
2、リーダーシップの行動類型論
パーソナリティという個人の内面的なものではなく、行動パターンという外面劇なものからリーダーシップの類型化を図り、そこからリーダーシップの本質を探ろうとするものです。
行動類型論の特徴は、組織の効率と構成員の満足度の両方を高めるようなリーダーシップの類型を究明することにあります。
1、アイオワ研究 (レビンのリーダーシップ類型論)
レビンは、集団の動きについての科学的実験を行い、その中でリーダーシップ・パターンが、集団の成果に影響することを明らかにしました。
リーダーシップのタイプを、下記の3つに分け、それぞれのタイプと成果との関係を調査しました。
- 民主型リーダーシップ:リーダーは援助し、集団で討議し決定する
- 独裁型リーダーシップ:リーダーがすべてを独裁的に決定する
- 放任型リーダーシップ:すべてを個々人で自由決定する
結論としては、民主型リーダーシップが、集団の凝集性、メンバーの積極性や満足度、集団の作業成果のいずれにおいても他のリーダーシップ・スタイルよりも優れているとしている。
2、オハイオ研究
オハイオ州立大学で行われた研究で、最終的にリーダーシップ行動の大部分を実質的に説明するものとして、「構造づくり」と配慮」という2つのカテゴリーに絞り込んでいます。
- 構造づくり:目標達成を目指す中で、自分(リーダー)と部下の役割を定義し構築すること
- 配慮:部下の感情への気配りやアイデアの尊重など、職務上の関係を持つこと
結論としては、「構造造り」と「配慮」の両方に対して高い関心を示すリーダーのもとでは、部下の業績と満足度が高まる可能性が高いとしています。
※ただし例外も多く、状況要因をこの理論に組み込む必要性があることが分かっています。
3、ミシガン研究
ミシガン大学で行われた研究でリッカーとがまとめあげたもので、下記の4つの組織類型を示しています。
- 独善的専制型:リーダーは部下を信頼せず、意思決定に部下を参加させない
- 温情的専制型:リーダーは部下をある程度信頼するが、部下に対し恩着せがましいやり方をとる
- 相談型:リーダーは部下をかなり信頼しており、基本方針や全般的決定権以外の個別問題は部下に任せる
- 参加型:リーダーは部下を全面的に信頼し、意思決定は組織全体で行われる
また、最終的にリーダーシップ行動の側面として、「従業員志向型」と「生産志向型」という2つにたどり着いた。
- 従業員志向型:部下のニーズへの関心、個性の違いの受容など、人間関係を重視する
- 生産志向型:仕事の義重的あるいはタスク上の側面を重視する
結論としては、「参加型」の組織が理想型であり、このタイプの組織におけるリーダーシップの特徴から、従業員志向型リーダーが好ましいとしている。
4、PM理論
P(performance)は目標達成機能、M(maintenance)は集団維持機能であり、Pが構造造り、Mが配慮におおむね対応します。
P:目標設定や計画立案を明確にする
M:人間関係を良好に保ち、チームワークを維持・強化する
結論としては、PとMがともに高いリーダーシップスタイルが職務満足やチームワークなどに対して有効であるとしています。
5、マネジリアルグリッッド
ブレーク&ムートンによって図式化されたマネジリアルグリッドと呼ばれるマトリックス図であり、「人への関心」と「生産への関心」の2つのスタイルに基づいています。
結論としたは、9・9型のチームマネジメント型が理想的なリーダーシップスタイルであるとしています。
※「生産への関心」と「人への関心」はおおむね、オハイオ研究の「構造造り」と「配慮」、ミシガン研究の「生産志向型」と「従業員志向型」、PM理論のPとMに対応しています。
3、リーダーシップの状況適合論(コンティンジェンシー理論)
行動類型論においては、ベストなリーダーシップのスタイルが明らかにされたが、現実には、そのようなリーダーシップが有効ではないケースも存在した。
そこで、リーダーの行動の分析だけでなく、リーダーの置かれている状況にも目を向ける必要があることが認識されはじめ、状況適合論が展開されるようになりました。
この理論の特徴は、状況の特性によって、有効なリーダーシップのスタイルが異なるとする点であり、リーダーシップのコンティンジェンシー理論と言われています。
1、フィードラー理論
効果的な集団業績のためには、リーダーが部下と接する際の「スタイル」と、リーダーの置かれている「状況」とが適合していることが重要であると示しています。
【2つのスタイル】
- 仕事中心型 (機械的)
- 従業員中心型 (有機的)
【3つの状況要因】
- リーダーと集団との人間関係の良好さ
- 仕事内容の明確化の程度
- リーダーの権限の強さ
上記を踏まえてリーダーは3つの状況要因において、下記の結論となっています。
仕事中心型 ー 3つの状況要因が良好か悪いときに効果的な業績をもたらす
従業員中心型 ー 3つの状況要因が中程度(普通)の場合に効果的な業績をもたらす
仕事中心型は、3つの状況要因が良好ならほっといても大丈夫ですし、悪い時は無理やりやらせれば良いのです。
ちなみにフィードラーは、リーダーはスタイルを変えられないとしています。
たしかに、仕事中心・会社中心で部下のことは二の次のリーダーが、急に従業員思いにはならないですもんね。
2、パス・ゴール理論(ハウスの目標ー経路理論)
パス・ゴール理論における有能なリーダーは、道筋(パス)を明確に示して障害物を少なくし、従業員の業務目標(ゴール)達成を助けるというものです。
結論としては、リーダーは、「部下の特徴」と「仕事環境の特徴」という2つの状況要因に対し、補完する役割を担うスタイルをとるべきとしています。あくまでも補完であるため、タスクが明白、従業員の能力が高い、なえどの補完する必要がない場合には、フォローをするのはかえって好ましくない、ともしています。
部下が有能なら任せてやらせた方がうまくいくということですね。
フィードラー理論では、リーダーは自らのスタイルを変えることはできなとされているが、パス・ゴール理論は、リーダーは状況に応じて自らのスタイルを変えることができるとされています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
リーダーシップ論をもとに見てみると、「リーダーシップ」に一番大切な、目標を明確にしたり部下に寄り添って接したりということが最も成果を上げる行動だということが分かります。
「リーダーシップ」とは、常に部下の気持ちを考えつつ、会社の状況によって臨機応変に対応して行動することなので、あなたのタイプや性格とは関係なく、誰でも実践できることなのです。